独立して設計事務所を開設するためには、建築士事務所登録を行う必要があります。
建築士事務所登録は、都道府県の建築士事務所協会などが提出の窓口になります。登録に際しては、事前に管理建築士講習の受講やオフィスの確保などを済ませておく必要があります。
この記事では、建築士事務所登録について、手続きの概要や流れ、事前準備事項、提出先などを解説しています。
なお、建築士事務所登録は、法人か個人事業主かで必要な書類や手順が変わります。法人の手続きは、1-5 法人の建築士事務所登録とは?必要書類、法人登記から紹介を、個人事業主の手続きは、1-6 個人事業主の建築士事務所登録とは?必要書類、開業届から紹介を、あわせてご覧ください。
建築士事務所の登録とは
建築士法第二十三条では、設計等の業務を行い報酬を得るためには、建築士事務所登録が必要になることを定めています。独立して設計事務所を開設するためには、必須となる手続きです。
建築士事務所登録が必要となる建築士の業務とは、以下の6つを指します。
1)建築物の設計に関する業務
2)建築物の工事監理に関する業務
3)建築工事契約に関する事務に関する業務
4)建築工事の指導監督に関する業務
5)建築物に関する調査又は鑑定に関する業務
6)建築物の建築に関する法令又は条例に基づく手続きの代理に関する業務
建築士事務所登録を行うためには、申請までに法人登記やオフィスの確保、管理建築士の氏名や管理建築士講習の受講などを済ませておく必要があります。
建築士事務所登録の流れは?
建築士事務所申請は、管理建築士講習の受講やオフィスの確保の期間を見込む必要がありますので、下記の建築士事務所登録までの手順を理解しておきましょう。
申請書の提出から登録完了までの期間の目安は、各都道府県でおおむね1週間程度となっています。書類に不備があると差し戻しになってしまうので、事前相談を通じて確認してもらいましょう。
建築士事務所登録までの流れ
登録申請前に事前準備が必要となる手続きとは?
建築士事務所登録を行うために事前に行っておくべき手続きをまとめました。手続きに時間を要する手続きは、管理建築士講習の受講、法人登記、オフィスの確保の3点になります。
事前に必要な手続き | 必要となる提出資料 | 参考記事 |
専任の管理建築士の確保 | 管理建築士講習修了証の写し | 1-2 管理建築士講習の受講方法とは?合格率、開催日程・料金・業務経歴書証明書の記入方法を紹介 |
会社設立(法人登記) | 履歴事項全部証明書 | 1-5 法人の建築士事務所登録とは?必要書類、法人登記から紹介 |
オフィスの設置 | 賃貸借契約書の写しなど | - |
専任の管理建築士の確保
建築士事務所には、専任の管理建築士が必要になります。開設者が管理建築士を兼ねることができるので、小さい設計事務所としてスタートする場合は開設者が管理建築士を兼ねるのが一般的です。
管理建築士になるためには、建築士登録をすませた後に3年間の実務経験を経て、管理建築士講習の受講した証明となる修了証が必要となります。管理建築士講習は、法人設立前から受講できますので、計画的に受講しておきましょう。
詳しくは、1-2 管理建築士講習の受講方法とは?合格率、開催日程・料金・業務経歴書証明書の記入方法を紹介を参照してください。
法人登記
株式会社や合同会社などの法人として設計事務所を運営する場合は、登録申請前に法人を設立しておく必要があります。定款に「建築物の設計・工事監理」など、建築設計を業務として行うことがわかるような記載をしておくと、建築士事務所登録がスムーズになります。
詳しくは、1-5 法人の建築士事務所登録とは?必要書類、法人登記から紹介を参照してください。
オフィスの確保
建築士事務所を開設するには、実態のあるオフィスを確保する必要があります。賃貸オフィスの場合、法人化している場合は賃貸借契約の名義が法人名であることが求められますので、先に法人化を済ませておく必要があります。
シェアオフィスの場合は、独立した区画が維持できるなどの事務所として認められるための条件があります。また、郵便物だけを受け取るようなバーチャルオフィスの形態では登録ができません。
登録の有効期限は5年間。期間満了の30日前までに必要な更新手続き
建築士事務所登録の有効期間は、登録の日から5年間です。有効期間の満了後、引き続き設計事務所を継続する場合は、有効期間満了の30日前までに更新申請を行う必要があることを覚えておきましょう。
更新に必要な書類は、新規の登録と同様となります。東京都では2ヶ月前、神奈川県では3ヶ月前から受付しています。更新手続きを忘れてしまうと廃業になってしまいますので、早めの手続きを済ませておきましょう。
建築士事務所の登録窓口は、都道府県の建築士事務所協会
建築士事務所登録は、都道府県毎に登録事務を行う窓口が定められており、都道府県の建築士事務所協会等が指定されています。東京都の場合、一般社団法人東京都建築士事務所協会が指定されています。
主要な都道府県の窓口と案内ページ
都道府県 | 登録事務を行う窓口 | 住所 |
東京都 | 東京都建築士事務所協会 | 新宿区新宿5-17-17 渡菱ビル3階 |
神奈川県 | 神奈川県建築士事務所協会 | 横浜市中区不老町3-12 加瀬ビル201 2F |
愛知県 | 愛知県建築士事務所協会 | 名古屋市中区錦1-18-24 いちご伏見ビル5F |
大阪府 | 大阪府建築士事務所協会 | 大阪市中央区農人橋2-1-10 大阪建築会館2F |
京都府 | 京都府建築士事務所協会 | 京都市北区小山南大野町1番地 紫明会館1階 |
兵庫県 | 兵庫県建築士事務所協会 | 神戸市中央区下山手通五丁目9番18号 古河ビル4F |
北海道 | 北海道建築士事務所協会 | 札幌市中央区大通西5丁目11 大五ビル6階 |
宮城県 | 宮城県建築士事務所協会 | 仙台市青葉区上杉2丁目2-40 |
福岡県 | 福岡県建築登録センター | 福岡市博多区博多駅東3-14-18 福岡建設会館5階 |
登録に必要な手続きを理解し、計画的に手続きを進めよう
建築士事務所登録は、設計事務所を開設するために必要な手続きです。事前準備が必要な手続きを把握した上で、スケジュールを立て、計画的に手続きを進めましょう。
建築士事務所登録に関するポイントは下記の通りです。
- 建築士事務所登録の窓口は、各都道府県の建築士事務所協会
- 事前の準備として必要な手続きは、法人登記やオフィスの確保が必要
- 小さい設計事務所では、開設者が管理建築士を兼ねるのが一般的
- 管理建築士講習は申請前に受講しておく必要がある
- 建築士事務所登録の有効期間は5年間。更新は同様な手続きが必要となる
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