設計事務所の開設手続き(建築士事務所登録)は、自分自身で完結することもできますが、専門家に手続きを依頼することもできます。建築士事務所の登録・申請手続きを代行できるのは、行政書士になります。
行政書士に建築士事務所登録の手続きを依頼した場合の報酬の目安は、5~6万円程度になります。
この記事では、建築士事務所登録を行政書士に依頼する方法やサポート内容、料金について解説しています。建築士事務所登録の概要について調べている方は、1-4 建築士事務所の登録とは?設計事務所開設までの流れや有効期間を紹介 の記事をあわせてご覧ください。
建築士事務所の手続きは行政書士が代行できる
設計事務所を開設するための手続き(建築士事務所登録)は、行政書士に手続きを依頼して代行してもらうことができます。
行政書士は、行政書士法に基づく国家資格者で、官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類の作成、同内容の相談やこれらを官公署に提出する手続について代理することを業としています。
建築士事務所登録以外にも、年次報告書の作成や建築士事務所の変更届なども支援を受けることができます。また、法人設立の手続きも行政書士が窓口となり、司法書士などと連携しながら手続きを依頼することができます。
行政書士に依頼できる建築士事務所の手続きと報酬の目安は?
行政書士事務所には、建築士事務所の登録以外に、更新、変更届、年次報告なども依頼することができます。各手続きを行政書士に依頼した場合の行政書士報酬の目安を紹介します。
建築士事務所に関する手続き内容と行政書士報酬の目安
手続き内容 | 行政書士報酬の目安 | 関連記事 |
建築士事務所登録(新規) | 50,000~60,000円 | 1-4 建築士事務所の登録とは?設計事務所開設までの流れや有効期間を紹介 |
建築士事務所登録(更新) | 40,000~50,000円 | 1-4 建築士事務所の登録とは?設計事務所開設までの流れや有効期間を紹介 |
建築士事務所変更届 | 22,000~30,000円 | 1-9 管理建築士の変更手続とは?退職等で必要な建築士事務所登録事項変更届 |
年次報告書 | 20,000~25,000円 | 1-8 建築士事務所の年次業務報告書(設計等の業務に関する報告書-建築士法23条の6)とは?提出書類や期限 |
行政書士への相談・依頼の流れは?
建築士事務所登録を行政書士に依頼する際の一般的な流れを紹介します。
行政書士への相談・問合せは、行政書士事務所のホームページのフォームから行うのが一般的です。建築士事務所登録を依頼する場合、法人か個人か、開設先の都道府県、オフィスが確保できているか、管理建築士講習の受講などが済んでいるかなどの状況を伝えると適切なサポートを受けやすいです。
行政書士事務所からの返信のメールで、状況の簡単なヒアリングやアポイントの日程調整、アポイント時に用意する資料などの案内が来ることが多いので、相談までのやり取りで要望を伝えることもできます。
初回面談では、行政書士の方から、手続きの流れや必要な書類、金額感などの説明を受けます。初回相談は無料である行政書士が多いですが、例外もあるのでHPで確認しておきましょう。
法人設立も依頼したい場合や、履歴事項全部証明書や住民票などの代理取得もお願いしたい場合は、面談前のやりとりか、面談のタイミングでお知らせしておくと手戻りがなくスムーズです。
行政書士事務所への依頼の流れ
建築士事務所登録の相談時に用意しておくとよい資料(法人の場合)
行政書士事務所との相談時に用意しておくとよいものとして、下記のようなものが挙げられます。
- 事務所の賃貸借契約書の写し
- 定款のコピー(法人の場合)
- 建築士免許証の写し
- 管理建築士講習の修了証の写し
- 履歴事項全部証明書(過去のものなどで可)
履歴事項全部証明書は、実際に提出する際には3ヶ月以内のものを取得・提出する必要がありますが、相談の段階では内容が変わっていなければ以前取得したときのコピーなどでもかまいません。
建築士事務所登録に強い、行政書士の選び方は?
行政書士の業務は、許認可業務の書類作成全般に広がるため、それぞれ得意とするジャンルも異なります。行政書士の有資格者も多く、どの行政書士事務所を選べばいいのかわかりにくいと感じられるかもしれません。
建築士事務所に関する手続き代行を依頼するにあたり、建築士事務所登録に強い行政書士を選ぶポイントは、下記の通りです。
1,建築士事務所登録代行の実績があるか?
行政書士の業務は多岐に渡るため、建築士事務所登録の代行手続きに精通している行政書士事務所を選びましょう。
同じ建築・建設系の手続きでも、建設業登録や経営審査などは頻度や報酬が大きく、これらを得意としている事務所もあります。建築士事務所登録の実績があるかどうかを確認しましょう。
2,対象地域での実績があるか
建築士事務所登録の手続きは、都道府県ごとに窓口が異なります。提出する書式や添付資料は共通していますが、各都道府県や窓口担当者により細かい指摘内容に相違が見られます。
対象地域での実績があるかどうかで、手続きのスムーズさも変わりますので、届け出予定の自治体に事務所を置いていたり、実績を有しているかを確認しましょう。
3,法人設立など、他の士業との連携がスムーズか
建築士事務所登録は、会社設立と同時に行うケースも多く、法人設立にも精通している行政書士を選ぶと手続きがスムーズです。
法人設立の場合、定款作成の代行等は行政書士が担当できますが、登記は司法書士が担当する必要があるため、分業が前提となります。
実際の手続きは行政書士単体では完結することができませんので、他の士業の先生と連携ができている事務所かどうかを確認するとよいでしょう。
4,サポート範囲や追加となる業務が明確か?
行政書士事務所による手続き代行は、行政書士によってサポート範囲が大きく異なります。申請書類の多くを自分で記入して、提出だけを代行してもらう場合もあれば、必要な情報を先回りして整えてくれて、押印手続+α程度で対応してくれる行政書士事務所もあります。
また、行政書士に住民票や登記簿謄本の代理取得を依頼することができるのですが、別途報酬となるのが一般的です。
代理取得については問合せ時に質問するか、サポート範囲や追加業務の金額が明示されている会社を選ぶようにしましょう。
行政書士に相談・手続きを依頼した時の料金は?
行政書士に建築士事務所登録の手続き代行を依頼した場合の料金・費用の相場はいくらになるでしょうか?
建築士事務所登録について詳しい解説があり、手続き金額の相場も含め、代表的な行政書士事務所のホームページから相場を抜粋して紹介しています。行政書士の報酬とその他費用も含めて紹介します。最新の料金は、リンク先の行政書士事務所のホームページで確認してください。
建築士事務所に関する情報が充実している行政書士事務所と報酬の目安
事務所名 | 所在地 | 行政書士報酬 | その他費用 |
社会保険労務士 行政書士 岩元事務所 | 東京都葛飾区 | 50,000円 | 登録手数料 18,500円 住民表などの代理取得は実費 |
後藤政雄事務所 | 東京都千代田区 | 30,000円~ | |
桜塚行政書士法人 | 大阪府豊中市 | 50,000円~ | 申請手数料 18,000円 |
たかはし行政書士事務所 | 福岡県久留米市 | 50,000円~ | 他費用は実費 |
岩永行政書士事務所 | 北海道札幌市 | 60,000円~ | 19,000円~ |
野口哲郎行政書士事務所 | 北海道札幌市 | 55,000円 | 19,000円~ 法定費用の他、履歴事項証明書、 管理建築士の各種証明書等実費 |
建築士事務所登録を行政書士に依頼するケースは?
個人事業主の建築士事務所登録は提出書類も法人に比べて少なく、独力で提出することは十分可能です。実際に複数の個人事業主が独力で提出しています。個人事業主の建築士事務所開設手続きについては、1-6 個人事業主の建築士事務所登録とは?必要書類、開業届から紹介をご覧ください。
法人の建築士事務所登録も、やや複雑になるものの手続き自体は難しくありません。法人の建築士事務所の開設手続きについては、1-5 法人の建築士事務所登録とは?必要書類、法人登記から紹介 をご覧ください。
建築士事務所登録は独力で行うこともできる手続きですが、行政書士事務所に依頼するとメリットを感じられるケースを紹介します。
法人設立と建築士事務所の同時開設
会社設立と建築士事務所の開設を同時に行う場合、必要な書類を揃えるのに役所を往復することになります。行政書士事務所は、法人設立も業務として代行してくれる事務所も多いので、同時に依頼することで手続きの負荷を大きく減らすことができます。
会社設立と建築士事務所の開設を同時にお願いすることで、合計10万円程度の報酬で受けてくれる行政書士事務所もあります。検討の余地もあるでしょう。
個人事業主からの法人化の場合
個人事業主からの法人化を行う場合は、手続きがより複雑になります。通常の法人設立の手続きに加えて、個人事業主としての建築士事務所の廃業手続きも必要となるためです。
また、個人事業主からの法人化を行うということは、売上が順調に伸びており、業務量も増えている段階だと思います。売上も順調で本業により多くの時間を割きたいという状況になっているのであれば、プロに手続きを任せるというのも有効な選択肢に入るでしょう。
支店の開設や都道府県をまたぐ移転など
ハウスメーカーや工務店などの大手企業の支店の開設や、小さい設計事務所で都道府県をまたぐ移転などは、行政書士事務所を活用するメリットがあると言えるでしょう。
一定以上の規模の会社になると、法人の役員、建築士事務所の開設者、管理建築士が別人格となることが多く、添付書類が増えたり、収集手続きのための社内調整が面倒になります。
総務担当者や営業事務の方などが主担当になる場合はプロにお願いして、より本質的な業務に専念するのも1つの選択肢だと思われます。
他の都道府県に新規で支店を開設する場合などは、進出先の都道府県での手続きに長けた行政書士事務所に依頼することで、開業・移転で忙しい時期の手続きを楽にする効果も得られるでしょう。
行政書士事務所を活用して、建築士事務所の手続きを楽に進めよう
建築士事務所に関する登録・申請手続きは、行政書士事務所に手続きの代行を依頼できます。自分でもできる手続きですが、受注が順調で時間が惜しいような状況や大きな企業では手続きを依頼するメリットは十分得られます。
行政書士事務所に建築士事務所登録の手続きを依頼する時のポイントは下記の通りです。
- 建築士事務所登録や更新手続きは、行政書士に依頼することができる
- 行政書士の報酬の相場は5~6万円、法人開設も依頼すると10万円程度
- 会社設立の手続きと建築士事務所登録を一括で依頼できる行政書士もいる
- 支店の開設や法人化をともなう場合は、プロに依頼するメリットが大きい
- 行政書士によって任せられる範囲が異なるので、依頼前に確認しよう
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